■Last updated on 29 May 2004■


 改正特許法等成立(5月28日)

 審査官の増員による審査処理の促進,実用新案の権利期間の10年延長及び特許への出願変更可,職務発明規定の見直しなどを内容とする特許法等の一部改正法が成立しました。これにより、特許に関しては、審査順番待ち期間ゼロを実現するとしています。また、実用新案については、かなり魅力のある制度になるものと期待されます。


 発明に対する対価に判決(1月30日)

 東京高等裁判所は、1月29日、元日立製作所社員の発明報酬として、海外における特許利益も認めて、会社側に合計で約1億6200万円の支払いを認める判決を言い渡しました。一方、1月30日、青色発光ダイオードをめぐる同様の訴訟で、東京地方裁判所は、元従業員の発明者に対し、日亜化学工業に200億円の支払いを命ずる判決を言い渡しました。
 会社側としては、報酬額を低く抑えたいのが本音ですが、特許庁は、報酬額について発明者の意見が反映されるように特許法を改正する方向のようです。


 改正特許法施行(1月1日)

 特許異議申立制度と特許無効審判制度の併合,PCTに基づく国際出願のみなし全指定制度導入などを柱とした改正特許法が平成16年1月1日から施行されました。また、4月1日からは、特許庁料金が改定されます。最も関心の高い料金改定についてはレポートにまとめていますので、ご参照ください。


 特定侵害訴訟代理業務試験の合格者発表(12月25日)

 特許権侵害などの知的財産関係の侵害訴訟について弁理士に訴訟代理権を付与する特定侵害訴訟代理業務試験の合格者が発表されました。805人の受験者に対し、合格者は553人で、当初の予測よりも非常に厳しい結果となっております(自分も合格しております)。


 実用新案法改正の動向

 現在、特許庁は、実用新案制度について、産業構造審議会の実用新案制度ワーキンググループで検討を行っております。具体的な検討課題としては、物品の形態(形状・構造・それらの組み合わせ)以外のものについての早期保護,存続期間の延長,実用新案登録後の特許への変更などです。これらのうち、権利期間について、一部報道によれば、10年とするということのようです。今回の実用新案制度の改正により、市民や中小企業にとって知的財産がより身近になり、有効に保護されることが期待されます。


 7月1日から出願様式が変更

 2003年7月1日から、特許出願の様式が変更になり、特許請求の範囲が明細書から独立した書面となります。そして、明細書の記載項目がPCT出願の様式とほぼ同一となります。これにより、国内出願とPCT出願は、国際事務局や国際調査機関に対する費用を除けば、ほとんど同じです。PCT出願は、指定国の全指定+優先日から30ヶ月の翻訳提出という国際的に先願権を確保するとともに翻訳文提出の猶予期間を得るという利点があり、今後ますます利用の程度が高まるものと思われます。


 角川書店による「NPO」,「ボランティア」の商標登録に対し団体側が反発(6月4日)

 一部報道によれば、大阪のNPO団体が、情報誌「NPOジャーナル」を商標登録しようとしたところ、角川書店による「NPO」の商標登録(商願2002-2675)が判明したそうです。他に、「ボランティア」という出願(商願2002-2676)もあるということです。これらの出願に対し、NPO団体はけしからんということで、出願の取り下げ要請や登録無効審判の請求を検討しているということのようです。
 商標権については、商標的態様で使用したときに侵害の問題が生ずるということであって、「NPO」なる文言を雑誌などに使用したときに、それがすべて権利侵害となるわけではありません。角川書店側は、NPOの雑誌などに対して商標権を主張するつもりはまったくないということですが、商標的使用態様でない場合は、そもそも権利を主張できる対象ではありません。つまり、NPO団体が自ら発行する情報誌に「NPO」とタイトルをつけても、読者はNPO団体が発行している雑誌だから「NPO」となっているとしか見ないわけです。「NPO」なるタイトルが商標であるとは思わないわけですね。
 一方、大阪のNPO団体の主張もちょっと矛盾するように思われます。「NPOジャーナル」について一部のNPO団体が商標登録を受けると、他のNPO団体は「NPOジャーナル」を使うことができなくなってしまいます。また、NPO団体というのは、非営利組織ということですが、商標登録を受けるということは、結局のところその商標に対する利益を主張するということであり、NPOって何だろうと考えてしまいます。
 お金がなくて商標登録を受けられない民間企業もあるというのに、非営利組織が商標登録を受ける,しかも弁護士さんまでついているということですから、NPOってお金持ちなんですね。


 高裁、社員の特許対価請求容認判決(4月23日)

 最高裁判所は、オリンパス社の元社員が会社に対して自分の発明に対する「相当の対価」を請求した事件で、支払いを命じた下級審の判決を支持し、会社側の上告を棄却しました。判決の中で、裁判長は、「会社側が決めた報奨額が、相当の対価に満たないときは、従業員は不足額の支払いを求めることができる」との判断を示しました。
 発明者に対する対価については、青色レーザをめぐる紛争を機にいろいろ議論されていますが、いずれにしても金額は増額される傾向にあることは間違いありません。企業としては、高額の報奨金を支払わなければなりませんが、このことは、逆に発明あるいは発明者について相当の選別をせざるを得なくなるものと思われ、技術者をとりまく環境が大きく変化する可能性があります。


 特許法改正案閣議決定(2月28日)

 特許法等を一部改正する法律案が閣議決定されました。格別の事情がない限り、ほぼ原案通り国会で可決成立の見込みです。この改正案は、(1)審査請求料の大幅な値上げ,(2)異議申し立てと無効審判の一本化,を主な内容とするものです。出願から登録に至る総費用は軽減されますが、一時的に高額の審査請求料を支払う必要があり、個人や中小企業の経済的負担は実質的に増大すると考えられます。減額免除制度の弾力的な運用が望まれます。


 特許庁「ビジネス関連発明の最近の動向」を公表(2月14日)

 特許庁は、ビジネスモデル特許関係の出願動向や審査状況を公表しました。これによると、2000年をピークにビジネスモデル関係の出願は減ってきています。また、特許になる割合は、他の分野よりも低いということです。詳細はホームページをご覧ください。ブームは去ったということであり、これから真価が問われる時代になるということでしょうね。


 審査請求料値上げの方向に?(1月23日)

 知的財産基本法の成立に伴い、特許法,著作権法,不正競争防止法,民事訴訟法などの改正が予定されていますが、特許法の改正に審査請求料の大幅な値上げ(2〜2.5倍程度)が予定されております。弁理士会は反対を表明しておりますが、ユーザー団体はいずれも賛成ということでした。これに対し、経団連がそのホームページで意見を表明しており、必ずしも賛成ということではないようです。
 2〜2.5倍も審査請求料を高くすると、一時期に高額の費用を必要とし、大きな負担増となります。個人や中小企業に対しては相当の配慮をするということですが、お金持ちじゃないと特許が取得できなくなり、結果的に大企業による特許制度の買占めが進むということですね。大企業には高額の審査請求料を要求し、中小企業には低額とすることで、両者のバランスをとり、公平な競争を目指すという視点が必要なのではないでしょうか。AIR DOのようなことになってはいけないと思います。


 知的財産基本法成立(11月27日)

 わが国の国際競争力の強化を図る必要性から、知的財産の創造,保護及び活用に関する施策を集中的かつ計画的に推進することを目的とした知的財産基本法が、参議院本会議で可決、成立しました。同法は、施策の推進に関する国,地方公共団体,大学,事業者の責務を規定するとともに、研究開発・研究成果移転の推進,権利付与・訴訟手続の迅速化等について必要な処置を講ずることを規定しています。


 EU,生産地使用に新提案(11月6日)

 一部報道によれば、WTO(世界貿易機関)の新ラウンドの交渉で、EU(欧州連合)は、世界各地における産品の名称に対する生産地使用を厳しくする提案を行った模様です。例えば、「インドカレー」という名称は、実際にインドで作られたカレーでなければ使用できないという具合です。
 このルールに従えば、信州味噌とか、博多明太などを国際的に保護してもらえるということですが、逆にインドカレーやブルガリアヨーグルトは使えなくなります。
 世界的に著名な産品の産地を有する国に有利に作用しますので、ヨーロッパ諸国には都合がよいと思われます。商標の選択に影響を及ぼしますので、今後の動向が注目されます。


 ゲームソフトにおける馬の実名使用にパブリシティ権認められず(9月12日)

 競馬ゲームソフト「ダービースタリオン」に登場する「オグリキャップ」などの馬主が、馬名の勝手な使用により損害を受けたとして、ソフトメーカーであるアスキーにゲームソフトの販売差止と損害賠償を求めた事件で、東京高裁は、いわゆるパブリシティ権につき「競走馬という『物』にまで認める法的根拠はない」として、原審に続き馬主側の請求を棄却しました。パブリシティ権とは、著名人の氏名や肖像などが獲得した顧客吸引力に対して主張される財産的権利のことで、判例を通じて認められている権利です。詳細は、こちらをご覧ください。同様の事案で、GIレースに“優勝した”ことがある馬に限ってパブリシティ権を認めた判決があります。


 9月1日から改正法施行で先行技術文献開示(8月12日)

  9月1日の改正特許法施行に伴い、明細書の【従来の技術】の項に、【特許文献1】,【非特許文献1】などの項目を設けて先行技術を開示するように、施行規則が改正されます。詳細は、特許庁のホームページのトピックスをご覧下さい。


 PCT,20ヶ月国内移行が30ヶ月に(8月12日)

  PCT(特許協力条約)22条の修正に対応して、日本に対する国内移行手続の期限が、予備審査請求の有無にかかわらず優先日から30ヶ月になります。9月1日施行です。詳細は、特許庁のホームページのトピックスをご覧下さい。PCT出願は、近年非常に注目されており、多くの出願が全指定(すべての国を指定)で、かつ、予備審査も請求されています。これは何を意味するかというと、とりあえず、世界の国について先願権を確保し、30ヶ月の期間の中で権利を取得する国を決めていこうということです。
 現時点では、一定国数の指定手数料を支払うことで全指定が可能ですが、数年後には指定手数料が定額もしくは廃止となる模様です。すると、一カ国指定でも全指定でも手数料が変わらないということになりますので、PCT出願=全指定+30ヶ月移行ということになります。そうすると、世界の国についてまず先願権を確保し、30ヶ月の期間の中で権利を取得する国を決めていこうという特許戦略の観点からは非常に便利になるわけで、今後ますます利用度が高まるものと思われます。


 日本の審査結果に基づいてシンガポールも特許取得(8月12日)

  シンガポール特許庁(Intellectual Property Office of Singapore: IPOS)は、修正実体審査制度(Modified Substantive Examination: MSE制度)を日本特許庁にも適用することになりました。これにより、シンガポールに特許出願を行った出願人は、日本で特許が成立したことを示す特許公報を英語訳とともにシンガポール特許庁に提出することで、簡単な審査でシンガポールにおける特許を取得することができるようになります。詳細は、特許庁のプレス発表をご覧下さい。


 政府,知的財産戦略大綱決定(7月3日)

 政府の知的財産戦略会議は、知的財産の保護・活用,産業競争力強化のための行動計画として「知的財産戦略大綱」を正式に決定し、2005年度までに達成する55の政策を盛り込みました。また、知的財産基本法も制定されます。これにより、米国などと比較して10年は遅れているといわれてきた知的財産を取り巻く状況が改善されるといいのですが。


 改正特許法の施行期日決定(6月15日)

 特許庁ホームページによれば、先の特許法改正のうち、発明の実施定義の見直し,先行技術開示制度の導入,PCT出願の国内移行期間の延長,標章の使用定義の見直しについては、本年9月1日から施行されます。


 日米特許庁,サーチ・審査結果を相互利用を検討(6月5日)

 日本特許庁及び米国特許商標庁は、増大する業務負担を削減するため、他庁が行ったサーチ結果や審査結果を相互に利用することについて、検討プロジェクトを立ち上げることに合意したと報道されていますが、信頼できる筋の情報によれば、そういうことも検討してみようかなという程度ということで、合意したということではないようです。


 中古ゲームソフト販売は著作権侵害に該当せず(4月25日)

 最高裁は、中古ゲームソフトの販売は著作権侵害に当たらないと判断し、メーカー側の上告を棄却しました。最高裁は、ゲームソフトを「映画の著作物」と認め、頒布権を有するとしました。しかし、製品が適法に販売されれば消滅し、その後の転売には及ばないとしました。原告ACCS側及び被告側ARTSのホームページにそれぞれ感想が述べられています。
 


 掲示板の匿名書き込みにも著作権(4月15日)

  ネット上の掲示板に匿名(ハンドル名)で書き込んだ内容の無断引用の是非が争われた事件で、東京地裁は、匿名の投稿にも著作権を認め、出版の差し止めと損害賠償を命じる判決を下しました。


 ファイルローグに仮処分(4月9日)

  東京地裁は、日本MMOのファイル交換サービス「ファイルローグ」上における市販の音楽CDから複製したMP3ファイルの交換を停止する仮処分を決定しました。なお、決定の内容によれば、特定のタイトルのMP3ファイルの送信が差し止められたということで、ファイル交換サービスの全体を差し止めることにはなっていないようです。なかなか味わいのある見事な決定ですね。本訴の成り行きが注目されます。


 ファイル交換サービス「ファイルローグ」に仮処分申請(1月29日)

  日本音楽著作権協会(JASRAC)日本レコード協会(RIAJ)の会員19社は、日本MMOが運営するファイル交換サービス「ファイルローグ」が著作権法に違反するとして、東京地方裁判所にファイル交換停止を求める仮処分を申請しました。 日本MMOは、「単にファイル交換の場を提供しているだけであり、それを違法コピーの交換に利用しているのはユーザである」との見解のようですが、JUSRAC側は、「交換されているMP3のほとんどが著作権侵害物である以上、日本MMOは違法行為に教唆・幇助により積極的に加担している」との見解のようです。各社のホームページをご参照ください。
 ファイル交換ソフトとしては、「napster」,「Gnutella」,「WinMX」が有名ですが、これらに代表されるP2Pという技術は、非常に注目されている将来性のある技術であり、決して著作権違反を目的としたものではありません。例えば、コピー機というのは、日常必要なものですが、著作権違反のためにあるわけではないのです。著作権侵害を取り締まる結果、新しい産業の育成が妨げられるようなことになってはならないと思います。


 日本公証人連合会、電子公証業務サービス開始(1月15日)

  日本公証人連合会は、指定公証人による電子公証業務サービスを開始するようです。このサービスは、現在、公証人が紙の文書について行っている認証や確定日付の付与のほかに、新たに電磁的記録(電子文書)についても指定公証人が認証や確定日付の付与を行うとともに、認証又は確定日付を付与した電子文書の情報の保存、内容に関する証明等のサービスを行うというものです。


 商品及び役務の区分を定める商標法施行例別表の一部改正(1月1日)

 商品及び役務の区分を定める商標法施行令別表第一の一部,商品及び役務の区分に属する商品又は役務について規定する商標法施行規則別表の一部が改正され、旧第42類が、新第42類〜第45類に分割されました。また、第9類に含まれる「電気式の機械器具」が「電気の伝導用、電気回路の開閉用、変圧用等の機械器具」である旨が明確化されました。平成13年12月31日までに出願されたものについては、旧分類が適用され、平成14年1月1日以降に出願されたものについては、第45類までの新分類が適用されます。防護標章登録出願についても同様です。新分類に基づく類似商品・役務審査基準も発明協会より出版されております。