■Last updated on 15 July 2002■


 特許事務所の料金が自由化されたと聞きましたが、安くなったのですか?

 登録を受けたドメイン名を、会社名として商標登録を受けることはできるのですか?

 急ぎで特許出願を依頼したら、割増費用を請求されたんですが、どうしてですか?

 特許出願前に調査をしたいのですが、どれくらい費用がかかるのですか?

 特許事務所に就職したいのですが?

 ちょっと難しい案件なのですが、依頼可能ですか?

 オンラインによる同時手続及び共同出願の場合は?

 商標専門の弁理士というのは、仕事として需要があるのでしょうか?

 アイデアが浮かび特許や実用新案を取るにはまず何を?

 弁理士になりたいのですが?

 鑑定の手数料は?

 特許出願の費用を安くするには?

 どうしてそんなに出願費用がかかる?

 最初の出願とその国内優先出願に基づく優先権主張外国出願は?

 ソフトウエアの著作権と媒体特許権の抵触は?

 特許は儲かる?

 特許査定から30日経過した後の特許料の納付は?

 コンピュータプログラムの著作権登録は?

 ソフトウエア出願のブロック図は?

 2件の発明提案がどうして1件の出願に?


  特許事務所の料金が自由化されたと聞きましたが、安くなったのですか?
 あちこちの事務所にお問合わせいただければと思いますが、自由化前の弁理士会料金が基本的には踏襲されているものと思われます。しかし、相談料や電子化手数料などを請求しないケースがあるようです。また、まとまった件数を依頼するとき,継続的に依頼するときに割り引くケースはございます。実質的には、安くなっているのではないでしょうか。
 手前共では、自由化後、電子化手数料や要約作成料は無料とさせていただいております。近郊であれば、出張費や交通費も出願費用に含めており、別途頂戴するようにはしておりません。手数のかからない内容であれば割引させて頂いておりますし、相談料も原則として頂戴しておりません。費用がいくらになるかは、基本的にはかかる手数に比例します。費用を安くしたいということであれば努力しますので、できるだけ少ない手数で出願できるよう、ご協力をお願い申し上げます。


  登録を受けたドメイン名を、会社名として商標登録を受けることはできるのですか?
 ドメイン登録と商標登録とはまったく別個のものです。従って、一方で登録を受けたとしても他方でも登録を受けられるという保証はありません。また、登録を受けたドメイン名の使用態様によっては商標権侵害となる可能性があります。商標は商品標識であり、会社名ではありません。また、会社名は商号であり、商号登記の問題となります。ちなみに、商号登記,商標登録,ドメイン登録は、いずれもまったく別個の制度です。ただ、結果的に、会社名がその会社の商品名であり、ドメイン名でもあるということがありえます。参考までに、商標登録を受けるためには、商標を使用する商品もしくはサービスを少なくとも1つ指定しなければなりません。
 では、著名な会社名を関係のない第三者がドメイン登録したらどうなるかということですが、これについては、富山地裁で最近次のような事案がありました。インターネット上で「http://www.jaccs.co.jp」というドメイン名を使用し、かつ、開設するホームページにおいて「JACCS」の表示を用いて営業活動をする被告に対し、「JACCS」という営業表示を有する原告が、被告による前記ドメイン名の使用及びホームページ上での「JACCS」の表示の使用は不正競争行為に当たるとして、その使用差止め及びホームページ上の営業活動における表示使用差止めを求めました。判決では、原告の主張が認められ、被告は登録ドメイン名を使用できなくなりました。詳細は、最高裁ホームページhttp://www.courts.go.jp/の「知的財産判決速報」の「その他の裁判所」をご覧下さい。


 急ぎで特許出願を依頼したところ、50%の割増費用を請求されました。自分としては納得がいかないのですが。
 特許事務所も、いわゆるバックオーダー(注文の在庫)を抱えています。従って、ご依頼をいただいた案件の処理は、その後に順番に処理するということになります。これを急ぎで処理するということは、多くの場合、残業したり、休日を返上して処理するということなのです。また、先に処理すべき案件を後回しにするということでもあります。これらのことを勘案すると、場合にもよりますが、割増費用を請求されることになります。東京駅を後から出発しても先に大阪に到着するためには、特急料金などの割増料金が必要ですね。それと同じです。
 なお、特許事務所は、通常1ヶ月程度の注文を抱えています。従って、依頼してから1ヶ月程度で処理できるのであれば、これは通常の処理期間の範囲内といっていいと考えられます。また、出願を依頼しても、結構その後に改良を加えることが多いです。むしろ、1ヶ月程度は弁理士さんとよく相談してじっくり考えてから出願したほうが結果的にはよく整備された出願書類を作成することができます。先願主義ですからどうしても出願を急ぐ方が多いのですが、じっくり検討してから出願することも重要です。なぜ、特許などの出願に代理人制度があるかというと、それはやり直しがきかないからなんです。やり直しが可能であれば、いくらでもやり直せばよいのです。それができないから、代理人制度があるんです。何でもいいから、書類を作って特許庁に出せばよいということではありません。例えば、お盆や正月に旅行に行くと通常より料金が高いのですが、混雑してサービスは悪いですね。それと同じで、急ぎで出願するということは、費用が高くなって書類の中身は悪いという可能性が出てきますので、そういう意味でも、じっくり時間をかけて出願したほうがよいと思います。



 特許出願前に似たようなものが出願されていないか調査したいのですが、費用はどのくらいかかるのですか。
 特許を取得するためには、発明が新規でなければなりません。世界のいずれかの国で発行された刊行物に記載されていても、特許を受けることはできません。そうすると、世界中のすべての文献を調べるのかということになりますが、それは到底不可能です。そこで、通常は、先行出願調査といって、類似のものが出願されていないかどうかを調べます。この場合も、出願から1年6ヶ月が経過していない特許出願などは公開されていませんので、調査不可能です。従って、公開されているものを調べます。
 調査方法ですが、特許庁,弁理士会,発明協会などに公報が揃えてありますので、それを一つ一つ調べます。しかし、この方法は、非常に手数がかかり、費用も高くなりますので、通常はコンピュータを使って調べます。では、どの程度費用がかかるかというと、それは場合によります。例えば、調査開始から直ぐに類似案件を発見したようなときは数千円程度で済むこともあります。しかし、類似案件が見つからないときは、調査範囲を広げることになりますので、費用はかかります。 調査範囲をどの程度にするかは、発明の内容によります。非常に出願件数が多い技術分野で安い費用で調査するということになれば、分類や公開時期などで絞ることになります。例えば、最近3年以内に公開されたものという具合です。幣所では、出願費用の10%を調査費用としています。これは、無駄な出願をしないために調査するわけですから、そんなに費用をかけるわけにはいかないということです。
 特許庁ホームページでも調査できますので、ご自分でやってみてください。なお、出願から1年6ヶ月経過していない特許出願など調査不能案件がありますので、ご注意下さい。それから、調査した結果、類似の案件がなかったとしても、それは「調査範囲内では類似案件を発見しなかった」ということであり、必ず特許になるということではありません。調査不能案件があり、限られた予算でやるわけですから、おのずと限度があります。そういうと、調査してもあまり意味がないのではないと思われるかもしれませんが、ミサイルをむやみに撃つのと、多少でも目標を定めて撃つのとでは、やはり相違は大きいと思います。



 特許事務所に就職を希望しております。特許管理士のような資格があると、応募時に有利になりますか。また、実務経験が全くありません。特許法などを予め勉強してから応募した方がよいのでしょうか。
 ゴニョゴニョ言っている間に、どんどん応募してください。まず、特許管理士というのは民間資格ですから、その有無は問題にはならないと思われます。次に、実務経験の有無も、募集の内容によりますが、まず問題にはならないと思われます。特許法などの知識が全くなくても大丈夫です。特許事務所という業界は、万年人材不足で悩んでいるところです。従って、特許の仕事がやりたいということであれば、実務経験や法律の知識はまず問題とされないのです。
 
 ただし、年齢によります。やはり中高年ということであれば、それなりの実務経験がないと難しいと思われます。また、仕事に対する適性も大切です。適性がないと、適性がある人ほどの評価が得られず、自分自身の人生もつまらなくなります。 特許事務所の求人は、技術系の求人雑誌の他、朝日新聞によく出ています。しかし、人材難でしょうか、最近は読売や毎日などにも比較的出ています。また、東京に特許事務所は集中していますので、やはり東京の新聞をご覧下さい。

 弊社は特許出願を社内で行っております。しかし、ちょっと社内では手に負えない難しい案件があり、特許事務所に依頼したいと考えておりますが、難しい案件だけでは引き受けてもらえないのではないかと心配です。また、社内処理との関係から、出願後は社内で管理したいのですが。
 手数料や納期などの面で折り合いがつけば、引き受けてもらえると思います。ご質問の内容からは何が難しいのかわかりませんが、技術的に難しいということであれば、その技術に詳しい弁理士に依頼するとよいでしょう。弁理士の専門分野は、例えば公開公報などで調べることができます。弁理士会でも紹介してくれます。また、特許事務所に依頼する場合には必ず出願の代理人として委任しなければならないというものではありません。出願書類のみを作成してもらって、特許庁への提出は社内出願と同様に行うということが可能です。幣所でも、他の特許事務所から「技術的にチンプンカンプンでさっぱりわからないから、何とかならんか」という案件を何件かやっています。もちろん、出願代理は、幣所ではなくその事務所ですよ。

 例えば、審判手続は郵送で行い、同時に行う補正手続きはオンラインで行うということが可能ですか。また、オンラインで共同出願を行う場合、パスワードを入力しない出願人はどうなるのでしょうか。
 まず、同時になすべき手続のうちの一方を書面(もしくはfd)で行い、他方をオンラインで行うことができるかということですが、手続の特例に関する法律(特例法)施行規則14条2項に同時の特例規定があり、可能です。これによれば、両者の手続を同日に行わなければならないと規定されています。次に、共同出願案件をオンラインで行う場合ですが、パスワードがハンコ代わりですから、パスワードを入力しない出願人についてはハンコがないという疑問が生じます。この場合は、特例法施行令2条4項,特例法施行規則様式44の手続補足書を提出します。なお、提出期限は3日以内と短いので注意が必要です。

 商標専門の弁理士というのは、仕事として需要があるのでしょうか?「知的財産」と一言で言っても、技術を手がける特許と商標では、まったく求められる能力が違うと思われるのですが。会社で商標の問題に接することが多く、その分野を専門的に手がけたい、と思っているのです。
 商標専門の弁理士さんは、たくさんいます。特に、法学部とか文学部などの文科系出身の弁理士さんは、どうしても技術が不得手ですから、商標や意匠を専門として事務所をやっていらっしゃいます。ただし、規定により事務所名称には「特許」の文字を入れなければいけないことになっておりますので、多くの場合は「**特許商標事務所」のようになっています。
 
 仕事として需要があるかですが、去年4月に施行された改正商標法により、手続きが大幅に緩和されて、少し勉強すれば商標登録出願や更新登録の手続は簡単にできるようになりました。そんな事情で、商標を専門とする弁理士さんの間では、将来に非常に不安を感じている方が多いのが実状です。また、商標は、技術は関係しませんので、今後法曹人口が増えると、弁護士さんの進出も考えられます。 以上のような理由から、社外で商標専門の弁理士として独立してやっていくことは、相当困難なように思います。 ただし、社内で商標専門の弁理士として仕事をやるということであれば、それは十分に可能であろうと思います。会社の規模にもよりますが、ある程度の規模の会社であれば、特許だけでも、あるいは商標だけでも、それぞれ仕事量はあると思いますので、十分可能でしょう。特に、今後は不正競争などの事案も増えると思いますので、相当面白い仕事ができるのではないでしょうか。 なお、付言しますと、現在、弁理士会で弁理士法の改正が議論されていますが、その中で弁理士を特許弁理士と商標弁理士とに専門を分けてはどうかという意見があります。そ れは、ご指摘のようにあまりに異なる資質が要求されるからです。

 アイデアが浮かび、特許や実用新案を取りたいのですが、まず、何をしたらよいでしょうか?
 そのアイデアが既に他人によって出願されているときは、特許を受けることはできません。従って、まずすべきことは、先行出願の調査です。調査の方法は、
(1)特許庁工業所有権資料館や特許庁ホームページで自分でやる方法 (2)調査会社や特許事務所に依頼する方法があります。
 最初に(1)の方法から説明します。特許庁(東京都千代田区霞が関3−4−3,最寄り駅は地下鉄銀座線「虎の門」もしくは丸の内線「国会議事堂前」です)に行くと、守衛さんがいますので資料館で調査したい旨を伝えると、特許庁ビルへの入場を許可してくれます。資料館のフロアは、聞けば教えてくれます。資料館に行くと、係の人がいますので、どういう分野で調査したいかを伝えると詳しく教えてくれます。なお、膨大な先行出願資料がありますので、この方法は大変です。どの程度大変かは、一度資料館に行くとよくわります。特許庁ホームページでも調査できます。
 次に、(2)の方法は、更に次の2つがあります。  (a)マニュアルによる方法  (b)コンピュータによる方法 まず(a)のマニュアルによる方法は、特許庁資料館等で行う調査を代行して行ってもらう方法です。相当額の費用がかかります。(b)のコンピュータによる方法は、特許庁ホームページもしくはPATOLIS(パトリス)というデータベースにアクセスして調査する方法です。例えば「液晶」とか「DNA」のようなキーワードや、会社名,国際分類などを組み合わせて検索します。コンピュータによる機械検索ですから的確かどうかの問題はありますが、安い費用で広く調査ができるため、先行技術調査はほとんどコンピュータで行われています。
 なお、「PATOLIS」というデータベースは、パソコンを端末として利用することができます。もし、将来も含めて調査案件が相当数あるようでしたら、この際加入されてもよいと思います。月々¥2,000.−から利用できます(問合せ先:日本特許情報機構03−5690−5555)。 このような先行出願調査を行なうことで、他人がどんなものを出願しているかという事情が分かりますし、自分のアイデアが出願するに値するかどうかの評価もできると思います。なお、実用新案は、例え先行出願があっても実用新案登録を受けることは可能です。しかし、有効な権利とはなりませんので、注意が必要です。
 更に、特許や実用新案登録を受けるためには、その発明が世界中で発行された文献の いずれにも記載されていないことが必要です。しかし、世界中の文献を調べることは事実上不可能ですので、このような調査は行わず審査官による審査に委ねます。

 会社の業績が悪く、いつリストラされてもおかしくない状況にあります。そこで、弁理士の資格を取ろうと考えたのですが、将来性はどうでしょうか?
 残念ながら、率直に申しまして、さほど将来性があるとは思いません。なお、最近は合格者数が増加する傾向にありますが、受験者数も増加しており、合格率は3%前後で、ほとんど変化はありません。
 弁理士の仕事は多岐にわたりますが、書類の作成が主な仕事です。しかも、技術を説明する書類の作成です。冷暖房の効いた室内でパソコンやワープロのキーボードを操作する作業ですから、もちろん危険とか、汚れるとかいうことはありません。しかし、一日中キーボードを操作するというのは結構疲れます。しかも、その作業は一生続くわけです。 更に、法律文書ですから、一言一句決してないがしろにはできません。数字を一つ間違えただけで出願が取り下げられたり、特許権が消滅したり、というようなことになってしまうのです。また、書類の提出期限もありますので、期限内に必ず書類を作成して提出しなければなりません。 このように、肉体労働ではありませんが、非常に神経を使う仕事です。また、法律改正や先端技術についても勉強しなければなりません。更に、外国出願をやれば英語も勉強しなければいけないし、オンライン出願に対応するためにはパソコンも勉強しなければなりません。
 大学院のときに、当時の東芝の特許部長さんが「特許の仕事をやってみんか?」と、わざわざ研究室までスカウトにいらっしゃったことがあります。部長さんのお話 によれば、社内で特許部員を募集しても、応募者が一人もいないということでした。特許の仕事というのは、やり手がいないというのが実情なのです。 では、どうして弁理士になるのかというと「独立して開業できる」というのがやはり最大の魅力だと思います。ところが、これがどうも最近だんだん怪しくなってきました。それは、独立しても、仕事がきついだけでそれほど収入が得られなくなってきているからです。サラリーマンの平均年収以下というようなことも珍しくありません。特に、将来特許事務所の法人化が認められるようになると、企業による資本参加や系列化が進み、特定の会社の子会社になってしまう可能性もあります。そうなると、もう自由業とはいえないでしょう。 このように、せっかく難しい試験に合格して資格を取っても、仕事はきつい、独立開業は難しいということになれば、残念ながらその将来を明るいものと考えることはできません。もっとも、日本という国自体に将来性がないということかもしれませんが。

 専門家がみればすぐに結論が出るような場合、鑑定の手数料はどのようになるのですか?
 結局のところは、貴社とその特許事務所との常日頃のお付き合いによることになるであろうと考えられます。従って、規定通りということもあれば、場合によっては無料ということも有り得ると思われます。
 
 なお、特許事務所に依頼があるような鑑定事件というのは、通常は白黒の判断が難しいものがほとんどです。それは、簡単に結論が出るようなものは、わざわざ弁理士の見解を求めるまでもないからです。しかも、大抵の場合は、相当手数がかかるのですが、より客観的な結論を導くため、何人かの知り合いの弁理士の意見も聞いて結論を出します。 従って、多くの場合、鑑定事件というのは特許事務所にとって赤字なのです。つまり、普段のお付き合いの延長として赤字だけれども引き受けるというケースがほとんどです。皆さんは、結論としての鑑定書をご覧になるだけですが、その途中には様々なプロセスがあり、紆余曲折があります。通常は、いくつかの結論とそれを導く理由付けがそれぞれ複数出てきます。それらの中から最も妥当性のあるものを選んで鑑定書に纏め上げます。私どもにとって鑑定という仕事は、それこそ胃潰瘍にでもなりそうな思いでやる仕事なのです。

 特許出願の費用を安くする方法はないのでしょうか。
 特許出願の費用には、出願書類の作成に要する事務所費用と特許庁手数料が含まれます。まず、特許庁手数料については、減額や免除の規定がありますが、例えば生活保護を受けているなどの特殊な事情がない限りまず適用を受けることはできません。
  次に、出願書類の作成に要する費用ですが、最も高くなるケースとしては、手前共弁理士が発明者の方と面談して発明の内容を聞き出し、従来技術を調査して出願書類のすべてを作成するような場合が相当します。最も安くなるケースとしては、皆様の方で出願書類をすべて作成し、手前共弁理士が特許庁に提出するような場合です。つまり、出願書類作成にかかる手数の一部でもけっこうですから皆様でご負担していただくことで、その分だけ費用が安くなります。例えば、
(1)発明者の方に発明の内容を文書として作成してもらうようにする。
(2)従来技術を社内で調査する。
(3)図面を社内のトレーサが作成したり、パソコンで作るようにする。
などです。
 なお、特許事務所の費用には、事務所維持費(家賃・電気水道ガス),各種oa機器などのリース代,郵便通信費,調査費,プリント・コピー代,図面作成代,各種保険料,書籍資料費,研修費などの諸経費や人件費が含まれます。これらの費用は、結局のところ社内で出願を行ってもかかる費用です。ご自身の給料と比較して高いとおっしゃる方がいますが、経費類が相当かかる点を、ぜひご理解いただきたいと存じます。

 特許事務所に特許出願を依頼しましたが、30〜40万円かかると言われました。出願書類の形式を合わせるだけで、どうしてそんなに費用がかかるのですか。
 出願の依頼を受けたときの特許事務所の仕事としては、もちろん出願書類の形式を整えることも含みますが、それは一部でしかありません。では主な仕事は何かというと、発明を十分に開示するとともに、発明の本質とも言うべき特徴部分を抜き出すことです。
 特許法は、発明を開示する代償として特許権を付与するという建前を取ります。従って、特許を受けるためには、大前提条件として、発明を十分に開示しなければなりません。発明の開示が不十分だと、それだけで拒絶理由となります。 また、特許を受けるためには、新規性や進歩性などの特許要件を満たさなければなりません。従って、どの点が従来にない発明のポイントであり、特徴的な点かを見極めて特許請求の範囲に記載する必要があります。 このような2つの大きな仕事を、法律で定められた方式や様式を満たしつつ、そして更には、発明者や特許担当者の意見も考慮して、出願書類にまとめるのが特許事務所の仕事です。例えば、不動産の賃貸契約のように、一定の形式の書類に必要事項を書き込めばよいというようなわけにはいかないのです。

 国内出願aを基礎として国内優先出願bを行いました。その後製品を輸出することになり、外国でも特許を取得することになりましたので、優先権を主張として外国出願cを行うことになりましたが、最初の国内出願aから既に1年が経過していました。どうしたらよいでしょうか。
 最初の国内出願aについては優先期間(1年)が過ぎていますので、これは残念ながら優先権の主張は諦めざるを得ません。しかし、後の国内優先出願bについては、1年以内であれば優先権の主張が可能です。また、最初の国内出願aに開示された発明については、まだ出願公開等が行われていなければ、優先権を主張しなくても権利化の可能性はありますので、外国出願時に盛り込むようにすればよいでしょう。

 媒体特許が認められるようになりますが、その媒体に記録されたソフトの著作権と媒体の特許権とが抵触することはないのでしょうか。
 法律上はあり得ると考えられます。すなわち、そのソフトの著作権者には複製権がありますから、複製して頒布できるのですが、ソフトそれ自体は有体物ではありませんから、通常はcdーromやfdなどの媒体に格納して頒布することになります。しかし、他人がそのソフトについて媒体特許を取得したとすると、著作権者の頒布行為は特許権を侵害することになります。逆に、特許権者が媒体特許に基づいてその媒体を製造,販売したとすると、著作権を侵害することになります。
 
 特許法72条には、他人の特許発明等との利用抵触関係が規定されています。これによれば、先願にかかる他人の特許発明や登録意匠を利用するとき、あるいは他人の意匠権と抵触するときは、その特許発明を実施することができないことになっております。先願優位の原則で権利関係を調整する趣旨です。しかし、この規定には、他人の著作権との関係は規定されていません。 しかし、意匠法26条や商標法29条には、他人の著作権についても調整規定があり、出願前に生じた他人の著作権と抵触するときは、その登録意匠の実施や登録商標の使用が制限されます。このような点からすると、著作権と媒体特許との抵触関係は、それらに準ずる形で調整するのが妥当であろうと思われます。なお、実際上は、著作権者がその著作物の媒体特許も取得する場合がほとんどであろうと考えられますので、両者の抵触問題が頻繁に起こるというわけではないと考えられます。

 特許って儲かるんですか?
 ズバリお答えします。儲かりません。特許で儲けたという話はよく聞きますね。株でも何でも儲かった話というのはみんなが自慢して話します。しかし、損をした話は、カッコ悪いのでみんな黙っています。結果として、儲けた話だけが世間を転々とするわけです。特許出願のほとんどは個人よりも会社が行っていますが、特許部門が特許料収入で黒字の会社は、日本全体でも十社あるかどうかだといわれています。
 
 何人かの知り合いの特許担当者(全部著名な大企業です)に聞いてみると、本当に価値のある特許は100件に1件程度であるという見解でみごとに一致しています。つまり、100件出願すると、やっと1件儲かる特許が取れるということです。逆に言えば、1つの儲け話の裏には99の損をした話が隠れているということです。 ついでに申しますと、調査によって誰も出願していないことがわかったとします。この場合、可能性としては2通りあります。一つは「特許になる可能性がある」,もう一つは「特許をとっても意味がないから誰も出願していない」ということです。何がヒット商品になるかということが分からないのと同様に、自分の発明が儲かるものかどうかの判断も難かしいのです。

 特許査定になったのですが、私の責任で特許料を30日以内に納付するのを忘れてしまいました。何とかする方法はないのでしょうか。もし、特許を取れないと責任問題に発展しそうで、困っています。
 大丈夫です。特許査定時の特許料は、特許査定から30日以内に納付することになっています。もし、期限内に納付しないと、特許法第18条第1項の規定により、出願という手続が無効となります。しかし、この規定をよく読むと「特許庁長官は・・・手続を無効にすることができる。」となっており、「・・・無効にしなければならない。」とは規定されていません。つまり、特許庁としては、無効にしてもよいし、しなくてもよいのです。
 そこで、実務上は、期限後更に一定の期間(2〜3ヶ月程度か?)が経過するまで待って、それでも特許料が納付されなければ無効処分としているようです。従って、30日の特許料納付期限が過ぎてしまっても、速やかに納付すれば、特許を受けることができるのです。現在、納付されていない旨の通知がサービスとして行われています。なお、補正指令も同様で、期限経過後でも速やかに補正書を提出すれば受理してもらえます。

 自社で開発したCD−ROMのプログラム登録をしたいのですが、どのようにしたらよいのでしょうか。
 プログラムは「プログラムの著作物にかかる登録の特例に関する法律」に基づいて登録を受けることができます。文化庁長官によって指定された登録機関である財団法人「ソフトウエア情報センター(softic tel:03-3437-3071)」で登録事務を行っております。なお、同センターのホームページはリンクリストにあります。
著作権はプログラムを開発した時点で発生します。小説を書けばその時点で著作権が発生するのと同じです。しかし、コピーが出回ったような場合、これを著作権侵害で排除するためには、そのプログラムに対する著作権の存在を立証しなければなりません。そこで、著作物の創作年月日などの登録を受けて、その立証に利用するのです。登録を受けるためには、その旨の申請書類を提出します。申請書の受付,方式審査の後に登録が行われ、その公示,謄本交付が行われます。登録内容は、創作年月日や著作権の移転などです。

 コンピュータプログラムの出願をしたいのですが、ハードのブロック図を追加してくれといわれました。私はソフトのエンジニアなので、ハードの方は全く分からなくて困っています。
 特許されるためには、発明が自然法則を利用していなければなりません。コンピュータプログラムの発明は、人為的な取り決めであって自然法則を利用していないのではないかということで、特許されない可能性があります。
 しかし、特許庁の審査基準によれば、
(1)ソフトウエアによる情報処理に自然法則が利用されている場合(例えば、コンピュータによる空調制御,デジタル信号のエラー検出など)
(2)ハードウエアが利用されている場合(例えば、階層的メニュー選択によるコマンド入力方法,かな漢字変換方法など)
には、自然法則を利用しているとして、特許を受けることができます。(1)の場合にはよいのですが、(2)の場合には「ハードウエアを利用していますよ」ということをアピールする必要があります。そこで、ハードのブロック図を示して、これを利用している発明であることを説明します。また、方法の発明で特許を取った場合はその方法の使用のみを特許権者が独占できますが、装置の発明として権利を取得した場合はその装置の製造や販売まで権利が及ぶので、権利行使上有利です。コンピュータプログラムの場合、フローチャートなどで表現されますので通常は方法の発明となりますが、できれば装置の発明としても権利化したいのです。そういう意味でも、ブロック図が必要になります。ソフトのエンジニアの皆さんは、通常ハード構成を全く意識せずにプログラムをデザインしているわけですから、ハードのブロック図を示せといわれても困ってしまうわけです。また、ハードのブロック図を示すといっても、どの程度に示したらよいのかという問題もあります。この分野の出願に慣れた特許担当者や弁理士に依頼すれば、適当なブロック図を作ってくれます。

 会社で2件提案したのですが、特許担当者と弁理士の人との話し合いで出願するときは1件になってしまいました。自分としては納得がいかないのですが、どうして2件出願しないのですか。
 特許法37条の規定によれば、産業上の利用分野と課題が同一の発明(1号)、産業上の利用分野と発明の主要部が同一の発明(2号)、方法と装置の発明(3,4号)などは、1出願にまとめることができます。ご質問のケースは、たぶんそのいずれかに該当したため、1出願としたのではないでしょうか。決して、特許担当者や弁理士の思いつきや気まぐれでまとめているということではありません。