審査請求期間改正  Copy Right 26〜28 August 2001


 はじめに
 2001年10月1日から特許出願の審査請求期間が7年から3年に短縮される。主な留意点について検討する。

 審査請求期間短縮の趣旨は???
(1)多くの出願の審査請求が6〜7年目に集中しているため、審査期間も考慮すると、7年という長期にわたって不確定な出願が大量に存在する。
(2)欧米のほうが早期に権利が付与されるため、それによって特許の国際的な相場がきまるようになり、日本特許が空洞化する。
等がその趣旨です。
 特に、前記(1)の点は、逆にいえば出願から7年間は「出願中」ということでがんばれるわけですが、今回の改正でそれができなくなってしまいます。社会の変化の激しい時代である以上、出願の行方が速やかに決せられることが好ましく、その点からは時代の流れに沿った改正であるといえます。

 特殊な出願の審査請求期間は???
(1)国内優先出願及びパリ条約優先権出願……10月1日以降に後の出願もしくは日本出願を行う場合は、審査請求期間は3年となります。後の出願日もしくは日本出願日で判断します。
(2)分割出願及び変更出願……元の出願日で判断します。元の出願が9月30日以前であれば、7年の審査請求期間となります。
(3)PCT出願……優先権主張を伴う場合であっても、国際出願日で判断します。

 留意すべき点は???
 今回の改正施行で、特に留意すべき点は、以下の通りです。

(1)7年の審査請求期間を確保したいときは、本年9月30日までに出願を完了する必要がある。
 上述したように、出願が継続中であるということでよいと考える場合や、権利化すべきかどうかの見極めに相当期間を要するような場合には、本年9月30日までに出願するようにします。

(2)審査請求を行うかどうかの判断を出願から4年目以降に行っている場合は、旧ルール出願の審査請求期間と新ルール出願の審査請求期間が重複するようになり、一時的に費用負担が増大する。
 具体的には、本年10月1日以降の出願が審査請求の期限を迎える2004年10月1日以降に、1997年10月1日以降に出願した案件も審査請求の期限を迎えるようになり、両者が重複するようになります。旧ルールの出願の審査請求を期限ぎりぎりに行っているような場合は、最長4年にわたって、審査請求案件が2年分存在することになります。もちろん、中間処理や特許料納付も重複するようになりますので、予算や人員の手当てが必要になります。

(3)要審査案件が増大するため、特許庁の審査処理が遅延し、権利化が遅れる可能性がある。
 単純計算すれば、2004年以降から要審査案件が倍増することになります。だからといって、審査処理能力を倍にするということが簡単にできるわけではありませんので、一時的に要審査期間が長期化し、権利化が遅れる可能性があります。まだ3年ありますので、早期に権利化を図る案件があるときは、速やかに審査請求したほうがよいかもしれません。


(4)審査請求を行うかどうかの判断を、従来は出願から7年以内に行えばよかったものを、3年以内に行わなければならない。
 従って、見通しがはっきりしない案件は、結局のところとりあえず審査請求せざるを得ず、審査請求案件が増大することになると思われます。

 今後の動向は???
 米国では審査請求期間がなく、おおむね1年程度で審査が行われること,EPでは審査請求期間が2年であること、などの事情を考慮すると、いずれわが国も更なる期間の短縮や場合によっては審査請求制度の廃止も検討される可能性があります。いずれにしても、出願する以上はそれを審査し、特許すべきものには権利を付与する、別言すれば特許に値しないものは出願しないという本来の姿に戻るように思われます。折角発明者が提案してくれたのだから、特許を取得するほどの内容ではないけれども出願するといった案件や,自社の出願件数の数字を大きく見せるための案件といったものは、今後消えてゆく運命になりそうです。