実用新案制度改正      Copy Right 27 March 2005



はじめに
改正特許法・実用新案法が平成17年4月1日から施行される。その概要を報告する。

実用新案登録出願に基づく特許出願制度の導入(特許法46条の2)
 改正前は、一度実用新案として登録を受けると特許出願に変更することはできず、また特許と実用新案の両方について登録を受けることもできませんでした。しかし、改正後は、実用新案登録後も特許出願に変更することができるようになります。
 特許出願を行うことができる期間は、実用新案登録出願から3年以内です。ただし、3年以内であっても、
(1)自らが技術評価請求を行ったとき、
(2)他人による技術評価請求があった旨の最初の通知から30日を経過したとき、
(3)実用新案登録無効審判が請求されたときの最初の答弁書期間が経過したとき、
は特許出願はできません。
 元の実用新案権は、特許出願時に放棄することになります。

実用新案権の存続期間の延長(実用新案法15条)
 改正前は出願から6年でしたが、改正後は出願から10年になります。

訂正の許容範囲の拡大(実用新案法14条の2)
 改正前は請求項の削除しかできませんでしたが、改正後は、1回に限られますが、請求範囲の減縮,誤記の訂正,明瞭でない記載の釈明ができるようになります。訂正を行う時期は、
(1)最初の技術評価書の謄本送達があった日から2ヶ月,又は
(2)登録無効審判の最初の答弁書期間,
のうちのいずれか早いほうが経過するまでとなっています。なお、請求項の削除はいつでもできます。

出願人・権利者側の対応
 実用新案の出願人ないし権利者側としては、
(1)将来の特許出願への変更も想定して、出願書類を作成する,
(2)将来の特許出願への変更の可能性を残すため、自らの技術評価請求を控える,
(3)出願から3年が経過する時点,もしくは技術評価や無効審判が請求された時点で、特許出願に変更するかどうか,あるいは訂正を行って実用新案として継続するかを検討する,
ことになります。
 一方、実用新案権の存続期間が10年になりましたので、特許出願から実用新案登録出願に変更したとしても、それなりの権利期間を得ることができます。また、訂正範囲が拡大されますので、改正前と比較して権利が生き延びる可能性はより高くなります。従って、
(4)特許出願の審査請求時点で、そのまま審査請求を行うか、実用新案に出願変更するか検討する,
という方法も有力となります。
 また、単なる公開目的であっても、将来的な権利行使の可能性を残す実用新案のほうが特許出願よりお得であるという考え方もできます。

第三者の対応
 今回の改正は、権利者側にとって非常に有利な改正となっております。従って、第三者としては、今まで以上に他社の実用新案に注意する必要が生じます。特許より実用新案のほうがましと考えるのであれば、
(1)特許出願に変更されないよう、実用新案登録出願から3年を経過した時点で技術評価や無効審判を請求する,
ことになります。
 しかし、逆に、
(2)早期に技術評価もしくは登録無効審判の請求を行う,
ことで、そのまま実用新案として継続するか,あるいは特許出願に変更するかの選択を迫るという方法も考えられます。この場合、特許出願に変更されたときは、技術評価や無効審判の印紙代の返還を求めることができます。